僕は無職や引きこもり、ホームレスに密着したドキュメンタリーやニュースが好きで、Youtubeにアップされた動画をよく見ます。有名な無職ニートといえば「働いたら負け」の人。個人的に好きなのは、軍師、アドバイザー的な?ニートです。
理系の有名大学を卒業したものの、時勢は悪く就職氷河期。就職できなかった彼はそのまま引きこもりとなってしまったのでした。年老いた母親と暮らしていて、彼自身もパソコンで生計を立てようとしますが、月給は一月わずか1000円(明治ではないですよ)。番組スタッフからコンビニでバイトした方が良いのでは?と言われます。彼はそれに対して割に合わない。やるなら軍師と言い放つのです。
これ、分かる人いますかね?僕も高校生から大学生にかけて、そう思っていた時期がありました。才覚に恵まれながら、未だ在野にある者のことを、三国志で有名な二人の軍師にちなんで臥竜鳳雛と言います。時が熟し、訪れた大器の三顧の礼に応え時の大勢力と国を別ち覇権を争うのです。
僕たちはこの鬱蒼とした山中を抜けた先の、遥か開けた赤土の大地に天下三分を見出しました。スコップを持ち寄り、傾斜を造成し、国家の基盤を作ることとしたのです。武経七書を代表する中国の兵法書「六韜」は国家の基盤として三宝すなわち農工商を挙げます。「まずは農業だ!」と声高に叫ぶ総裁の号令で、3日をかけて傾斜を平らとし、コメリで買った鶏糞を山と持ち込んだ時、僕たちは悟ったのでした。
それから10数年が経ち、伏せたる龍は伏せたまま、鳳凰の雛はこども部屋おじさんのまま、無情にも時は流れて一人、思い出の赤土山へとやってきました。開けた山から見下ろす故郷の眺めは、すっかり成長した松の木に覆われ失われていました。何者にもなれぬまま、年老いてしまったおじさんは赤土に腰を下ろして一休みします。そして何の感慨もなく、そのまま山を下りて帰路へ着きました。
勇闘すれば則ち生き、勇ならざれば則ち死せん。時代を超えても決して変わることのない真理を六韜は教えてくれます。事は極めてシンプルで、全身全霊で闘えば生き残れるし、そうでなければ死ぬと言っているのです。そんな当たり前のことすら30年も理解できないからこそ、僕は今日も無為に1日を終えているのです。
当たり前のことを当たり前にやれる人は強いのですね。