旅ちゃんねるは終わり、六本木君は独自にチャンネルを開設しました。今日はその企画に使用するゴ―プロの受け渡しのため、大阪へとやってきたのでした。新しくできた阪神百貨店最上階の蕎麦屋で昼食をとりながら、今後の展開を語り合っていました。確かにYoutubeは面白いのですが、実際は時間もかかりますし、いざやろうとしても公にできるような面白いネタもない。我ながらつまらない人間だなぁと感じながら毎日が無為に過ぎていくわけです。その点、六本木君は毎日3分程度といえども毎日更新を貫いていて偉いなと思います。
僕は子供の頃から人付き合いが苦手で、孤独な学生生活を送りました。当然、周りの学生とも足並みを合わせることができず、就職できたのが学校を卒業してから半年後のことでした。社会人になってからも、まともに人とコミュニケーションも取れず、仕事もできず、半ば追い出される形で退職となってしまったのでした。職場で受けたあの冷たく、無情な仕打ちを心に刻み込み、決意を胸に無職となったのでした。
僕に残されたのは節約を重ねて貯金したなけなしの金と、FXのアカウントだけです。もう二度と社会人として生きていけないと悟った僕は、当時高金利だった南アフリカランドと、オーストラリアドルに証拠金の数十倍のレバレッジをかけて、スワップ金利で人生最後の一攫千金に挑みました。
闇金ウシジマくんという漫画に「フリーエージェントくん」編というエピソードがあります。持たざる若者が情報商材ビジネスで人生を逆転させようと社会の底辺で足掻きます。彼らがのめりこむ情報商材ビジネスは、ネズミ講のようなもので、情報商材の売買に必要な資金を闇金で賄いピラミッドを作っていきます。物語の終盤にそのピラミッドは崩れ去り、人生逆転の夢は儚く潰えます。
哀れな債務者にトドメをさすダークヒーローウシジマくんは、意外にも落伍者に「お前は自分の全人生を賭けて勝負したんだろ?すげーじゃねぇか。なんもしてねぇー奴よりよっぽどマシだ」と声を掛けます。
天井知らずに跳ね上がる日本円に、我らが中央銀行は財務大臣の一声で莫大な資金介入を行いました。しかし肥大した資本主義経済の喧騒に我らの願いは虚しく、ピラミッドは崩れ去ったのでした。ロスカットのアラートにしんぞうのおとがきこえなくなっても。しんぞうは止まらず無様に鳴り続け、それでも今日を生き続けなければならないのです。