六本木君との旅動画は残念ながら終わってしまいました。10月、外は肌寒さを感じさせるようになりながらも、透き通るような空の青さに乾いた空気が体を通り抜ける感覚が秋の訪れを告げています。夕方になると空は真っ赤に染まり、ふと気づくと日は沈み夜がやってきたのでした。
三年前、祖父が死ぬ前の日もそんな季節でした。病院のガラス窓が夕日を浴びて真っ赤に輝いています。葉が散り木から落ちるように、秋は哀愁の季節でもあるのです。春、六本木君と大いに語った旅チャンネルは夏の終わりをもって終了しました(早すぎ)。チャンネルに残った旅動画のサムネイルを虚しく眺めながら、大人になって新しいことに挑戦する気力も尽き果て、年老いてしまった己の不甲斐なさに気を沈めるのみです。
退屈で何もない日々を過ごしながら、最近はアマプラやネットフリックスで映画を見たり、YouTubeのディスカバリーチャンネルでゴールドラッシュを見たりしていました。このゴールドラッシュという番組が結構面白いんです。持たざるアメリカのおっさんたちが、金を求めて莫大な投資をし、人生最後の一攫千金を狙うのですが、内容は酷いもので計画性も何もありません。機材の故障や仲間内の揉め事が大半で、目的の金も取れずにシーズン1は終わります。
春に思い立ち夏の終わりには終わるであろう「ゴールドラッシュ」も長く続く番組となりました。僕たちの旅チャンネルにはゴールドラッシュのような「物語」はなかったのです。破産をかけて機材を揃えたり、馬鹿げたことを馬鹿げたことでないようにプロレス仕立てにする勇気もなかった。しかし、春に思い立ち夏の終わりには終わってしまう物語もまた、無数にあることを、YouTubeを通じて僕たちは知っているのです。
「国破れて山河在り」とは唐代の詩聖杜甫による「春望」の一節です。戦乱によって荒れ果てた都で杜甫が詠んだとされていますが、遥か後世の人間がその情景を想像するに充分な内容です。「時に感じては花にも涙を濺ぐ」と続くその詩は、ゴールドラッシュに夢破れたどこまでもスケールの小さい持たざるおじさんの心に深く刻まれたのでした。
さて、旅チャンネルは終わってしまいましたが、ゴールドラッシュに先立ちレンタルしたブログのサーバー代金が毎年10,000円かかります。このまま何も使わないのはもったいないです。しょーもないことでも書きながら、旅チャンネルの復活の時を夢見てつまらない日々をもうしばらく続けていようと思います。